1. 4月新設住宅着工戸数は前年比+2.2%=国土交通省
国土交通省が5月31日発表した4月の新設住宅着工戸数は、前年比2.2%増の7万6,179戸となり、14カ月連続増となった。季節調整済み年率換算は88万3,000戸だった。ロイターの事前調査では、住宅着工戸数の予測中央値は前年比3.0%増だった。
持家は前年比8.1%減で5カ月連続の減少、貸家は同2.1%増で14カ月連続の増加、分譲住宅は同12.1%増で、3カ月連続の増加となった。
2022年(令和4年)4月の新設住宅着工戸数
利用関係別 | 戸数 | 対前年同月増減率 |
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総数 | 76,179戸 | 2.2% |
持家 | 21,014戸 | △ 8.1% |
分譲住宅 | 25,199戸 | 12.1% |
貸家 | 29,444戸 | 2.1% |
2.大和ハウス、新築のエネルギー消費ゼロへ 2030年度に
大和ハウス工業は新築する住宅や物流施設などの建物で、エネルギーの消費量の支出を実質ゼロにする方針だ。2030年度までに、新築する建物の全てでの達成を目指す。エネルギー消費が実質ゼロの住宅を指す「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」では積水ハウスが先行している。物流施設などの建物も加えることで競争力を高める。
5月13日に発表する中期経営計画に盛り込む。エネルギー消費の支出を実質ゼロにするため、断熱性能が高いサッシなどを導入したり、外壁に断熱材を設けたりすることで対応する。屋根には太陽光パネルを原則全ての建物に設置する方針だ。
2021年度で同社が手掛ける住宅のうちZEHの比率は53%(北海道を除く)にとどまる。同業の積水ハウスは同年度で92%に達しており、「まずは追いついていく」(大和ハウス)構えだ。2022年4月から販売する分譲住宅の全てでZEHを標準仕様とする。
3.積水ハウス、アプリで「つながる戸建て」
センサーなどのIoT機器を活用して鍵や家電をインターネットでつなげる「コネクテッドホーム」が戸建て住宅で普及しはじめた。積水ハウスはアプリ上で自宅の間取りを見ながら、それぞれの部屋の照明などを操作できるサービスを開始。足元では新築販売の4割程度で導入が進む。居住者の急性疾患を検知するサービスも実験中で、住宅のビッグデータ活用を模索する。
直樹くんが解錠しました――。とある平日の午後3時ごろ。出勤中のお母さんのスマホに、小学生になったばかりの子どもの帰宅を知らせる通知が届いた。積水ハウスが新築の戸建て住宅向けに提供している「PLATFORM HOUSE touch(プラットフォームハウスタッチ)」の機能だ。家族の情報を登録したカードキーで鍵を開け閉めするとアプリに通知され、誰が帰宅したのかといったことがわかる。
家電の操作も簡単だ。特徴はアプリ上に自宅の間取り図が表示されること。それぞれの部屋に配置された照明やエアコンなどのアイコンをタップすると、離れていても電源のオンオフや温度調整ができる。セキュリティ対策のための機能もある。外出中に警戒モードをオンにすると、部屋の窓が開いた時に通知を出して知らせる。さらに火災警報器とも連動し、警報が鳴るとスマホに通知する。
全国でサービスを開始したのは2021年末。2022年1月ごろから契約が出始め、足元では新築販売のうち4割ほどで導入されているという。担当の吉田裕明執行役員は「当初の想定より受け入れられている」と目を丸くする。
コネクテッドホームのサービスは既に2010年代から、米グーグルなどIT(情報技術)企業が中心となり提供してきた。しかし各家電のリモコンの赤外線を利用したIoT機器が一般的で、リモコンの登録など導入のハードルが高いという課題があった。吉田執行役員も「リテラシーを求めた商品が多く、普及しにくくなっていた」と指摘する。積水ハウスは新築の引き渡し時には設定を完了させる。利用料金も、初期費用を除き月額2,200円に抑えた。
積水ハウスが次に見据えるのが健康領域だ。天井に設置したセンサーで居住者の心拍呼吸数を検知するサービスの実証実験を実施している。急性疾患などで異常が生じると緊急通報センターに通知が届き、場合に応じて救急隊が出動し遠隔解錠で救出に向かう仕組みだ。他にも睡眠をテーマにしたサービスなど、IoT機器の活用アイデアは豊富だ。吉田執行役員は「家族の生活ログがどんどん蓄積され、住宅のビッグデータになる」と話す。
同じ住宅メーカーの大和ハウス工業もコネクテッドホームのサービスを仕掛ける。2018年にグーグルと連携し、音声で家電を操作できるシステムを開始した。自宅に15インチほどのタッチパネル型端末を設置し、家電の操作や手書き可能なカレンダーを搭載したシステムの実証実験も行った。遠隔診療など健康管理も自宅のパネルから可能になる可能性もある。吉田博之主任研究員は「大和ハウス経済圏ができるかもしれない」と意気込む。
今後はさらなる普及が課題になる。大手住宅メーカーは顧客と常にコミュニケーションし続ける営業担当が全国に散らばっているのが強みだ。消費者の生の声を生かし、スピーディーな商品開発や改善につなげられるかが焦点だ。
4.旭化成の営業益2割増 2022年3月期、EV向け電池部材好調
旭化成の2022年3月期の連結営業利益が前の期に比べ約2割増え、2,000億円程度だったことが分かった。新型コロナウイルス禍で低調だった自動車部品などが持ち直したほか、電気自動車(EV)向け電池部材が伸びた。原材料高などで従来予想(2,131億円)には届かなかったものの、過去最高益に迫る利益を確保したようだ。
売上高は約2割増の2兆4,500億円程度とほぼ会社予想通りとなった。2019年3月期を上回り過去最高を3年ぶりに更新したとみられる。
コロナ禍で落ち込んでいた自動車向けなどの石油化学製品や高機能樹脂が回復した。電池の主要部材であるセパレーターは世界シェア2位と高い競争力があり、世界的な脱炭素の動きを追い風にEVや蓄電池向けの販売を伸ばした。スマートフォンやパソコンの需要の高まりから、半導体製造に使う樹脂材料も拡大した。
「ヘーベルハウス」ブランドで展開する住宅事業は、北米の戸建て販売などが好調に推移。2021年6月にグループ会社がオーストラリアの住宅会社、マクドナルドジョーンズホームズを子会社化したことも収益を底上げした。
ヘルスケア分野は、米医療機器子会社ゾール・メディカルが手がける人工呼吸器の売り上げが鈍化したものの、自動体外式除細動器(AED)を中心に好調だった。
一方、原材料高などが逆風となり、前期の営業益は市場予想平均(QUICKコンセンサス)の2,170億円、コロナ前に記録した最高益の2,095億円(2019年3月期)をいずれも下回ったもようだ。
ロシアのウクライナ侵攻を受け樹脂原料となる原油やナフサ(粗製ガソリン)の価格が高騰。ナフサ価格の指標となるアジア地区のスポット(随時契約)価格は3月初めに9年ぶりに1トン1,000ドルを上回った。価格転嫁はおおむね進んでいるものの、市況を反映するまでの期ずれが樹脂製品の一部で生じたとみられる。
医療機器を扱うゾール・メディカルの製品販売では、世界的な物流混乱に伴う原材料調達の遅れなどが足かせとなった。自動車メーカーによる減産も影響した。旭化成はエンジン回りに使う耐熱性に優れた樹脂「レオナ」や、軽さが特徴で車載部品に使う「ザイロン」などの自動車向け製品を扱っている。
同社は5月13日に2022年3月期の決算発表を予定する。
5.オープンハウスと東京ガス 太陽光発電定額サービス開始
住宅大手のオープンハウスグループは東京ガスと連携し、新築の戸建て住宅向けに太陽光発電設備を低額で利用できるサービスの提供を始めた。初期費用でかかるパワーコンディショナー(電力変換装置)や電力量計などの機器代は東京ガスが支払い、利用者は設置工事費のみ負担する。導入費を抑えられるほか、電気代の節約や二酸化炭素(CO2)の排出削減に貢献できる点をアピールし、サービスの普及を目指す。
同社が販売する戸建てのうち注文住宅を対象とする。契約期間は10年間で、サービスの利用料金は毎月3,300円程度。契約中に故障したり、修繕が必要になったりした際の保証も付けた。供給できる発電量の上限は1,500ワットを見込む。
不足した電力は契約する電力会社から購入する必要があるが、計画停電や災害による停電が発生した場合は家庭内である程度の電力をまかなえる。太陽光を自家消費することで、高騰する電気代の節約にもつながる。発電設備が稼働して電力が余った場合の売電収入は東京ガスが得るが、契約終了後は保有者に権利を譲渡する。
6.オープンハウス、2022年9月期を上方修正 純利益757億円
オープンハウスグループは5月13日、2022年9月期の連結純利益が前期比9%増の757億円になりそうだと発表した。米国不動産事業や投資用マンション事業が好調で、従来予想から37億円上方修正した。同日発表した2021年10月~2022年3月期の連結決算は、純利益が前年同期比21%増の395億円だった。
10~3月期の売上高は25%増の4,554億円、営業利益は44%増の599億円だった。首都圏や関西などの都市部を中心に戸建て住宅の販売が堅調に推移し、木材などの資材価格の上昇を吸収した。日本人投資家の資産分散ニーズを取り込むなど、米国の不動産販売などの事業は営業利益が2.2倍の45億円と好調だった。
7.検討中の新居の種類、注文住宅が5割強で最多 民間調査
リクルートの住宅調査研究機関SUUMOリサーチセンターが2021年12月に実施した調査によると、検討中の新居の種類は注文住宅が5割強で最多だった。新型コロナウイルス下で住環境への関心が高まるなか、自分の好みに合わせられる注文住宅が人気を集めているようだ。
調査は過去1年以内に住宅の購入や建築、リフォームについて検討または契約した20~69歳の男女を対象にインターネットで実施した。2,655人から有効回答を得て1,725人をサンプルとした。
複数回答で希望する新居の種類を聞いた。調査を始めた2019年から3年連続で注文住宅が最多だった。中古マンションが30%で初めて新築マンション(29%)を上回った。世帯年収別にみると、注文住宅の検討率は「200万円未満」、「800万~1,000万円未満」が62%で最多だった。同センターの小出佳世研究員は「一戸建てを建て替えたいシニア層とマイホームに住みたい子育て世帯がそれぞれのグループに多いのではないか」と分析する。
新居で解決したい住まいの課題について尋ねると、「収納が狭い」が2020年比3ポイント増の24%、「省エネ・断熱性能が悪い」が3ポイント増の14%だった。一方で「最寄り駅から遠い(12%)」、「通勤・通学時間が長い(7%)」は2年連続で減少した。テレワークやオンライン授業の導入などで、立地の良さやアクセスに加えて自宅での過ごしやすさを重視する傾向がみられた。
8.国産合板、4月比6%上昇 ロシアの禁輸影響続く
住宅の壁や床に使う国産針葉樹合板の価格が一段と上がった。指標となる厚さ12ミリ品は1枚1,900円と前月比100円(6%)高く、4月に続き最高値を更新した。ロシアの原料供給停止で国産丸太の価格が上昇。最大手のセイホク(東京・文京)などが原料高を理由に5月出荷分から打ち出した値上げが浸透した。
ロシアは3月以降、ウクライナ侵攻に経済制裁を科す米欧や日本に対し、合板材料となる単板の輸出を禁じている。2021年に起きた米国発の「ウッドショック」で北米産の丸太の供給も絞られている。柱やはりを作る製材所と合板メーカーで、国産丸太の確保をめぐる競争が起きている。
農林水産省によると、合単板用スギ丸太の4月価格は1立方メートル1万6,000円(工場着)と、3月比で300円(2%)上昇。前年同月比で4割高い。水分が多い国産のスギを使う場合、乾かす手間などでロシア産単板を使うより生産効率が落ちることが多い。一部の合板メーカーでは生産量が減っているという。
農水省がまとめた3月末の国産針葉樹合板の在庫量は9万4,767立方メートルと、1カ月の出荷量の3割程度。適正水準とされる出荷量の7割を大きく下回る。需要は首都圏の分譲住宅向けを中心に堅調だ。国産合板には依然として先高観がある。
9.輸入合板が最高値更新 品薄の国産から切り替え
住宅の壁や床に使う輸入合板が一段と値上がりし、最高値を更新した。住宅向けの需要が堅調に推移する中、ロシア産木材の供給停止のあおりで国産合板の価格が高騰。輸入品の割高感が薄れ、品薄が続く国産品からの代替需要が増えた。マレーシアからの輸入が安定しないことも高値の一因で、住宅などの建築コストを押し上げている。
輸入合板の指標となる構造用(厚さ12ミリ品)の流通価格は現在1枚2,100円前後。前週比で50円(2.4%)高い。1カ月の上昇率は8%に達する。2021年9月に最高値を更新して以降も上昇が続く。建設現場でコンクリートを流し込んで固めるのに使う型枠用合板(12ミリ品)も75円(4%)上昇し、1枚1,925円程度となった。
国産品からの切り替え需要が値上がりの要因。ウクライナに侵攻したロシアが制裁への対抗措置として3月以降、合板材料となる「単板」の輸出を停止。日本の合板メーカーは国産のスギやヒノキの手当てを迫られた。製材所などとの調達競争で原料となる丸太の価格が上がり、国産合板は1年前より82%高い1枚1,900円前後で取引されている。
合板は通常、丸太を近隣で調達できる国産品の方が安い。国産の急速な値上がりを受け、輸入品との価格差は1年で3割縮小した。割高感が薄れた輸入品に需要が集まった。
国内の合板需要は好調だ。新型コロナウイルス禍で在宅勤務が定着し、新築・リフォーム向けの引き合いが強い。住宅着工も底堅く推移し、合板メーカーの生産が追いつかない。「国産合板は注文量の6割しか調達できないことがある」(木材商社)
農林水産省がまとめた国産針葉樹合板の4月末在庫は10万1,414立方メートル。2021年4月に比べ2.3%少ない。1カ月の出荷量の4割程度にとどまり、需給均衡の目安とされる7割を大きく下回る。品薄の国産品を輸入で補う動きが広がった。
輸入合板の供給も安定しない。林野庁によると、主力のマレーシア産は3月の輸入量が7万1,000立方メートルと前年同月比21%少ない。マレーシアでは2021年の雨期が長引き、丸太の伐採が進まなかった。コロナ禍が長期化し、母国に戻った外国人労働者の再入国ができず、伐採現場が人手不足に陥った。
マレーシアでは「その日に出荷する丸太が確保されていないことさえあるようだ」(商社)。在庫が枯渇し、必要量を確保したい現地の合板メーカーなどが高値での調達に動いている。
主要建材の値上がりは、建築コストを押し上げそうだ。建設物価調査会によると、鉄筋コンクリート造の集合住宅の4月の工事原価は前月比0.9%、木造住宅は同0.2%上昇した。建築現場ではコストを抑えようと「型枠を再利用する回数が増えている」(型枠メーカー)という。