1. 2月の新設住宅着工、前年比6.3%増 市場予想は1.1%増
国土交通省が3月31日発表した建築着工統計調査によると、2月の新設住宅着工戸数は前年同月比6.3%増の6万4,614戸だった。増加は12カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は1.1%増だった。
内訳をみると、持ち家は5.6%減の1万9,258戸で、3カ月連続で減少した。貸家は4.6%増の2万3,583戸で、12カ月連続で増加した。分譲は23.3%増の2万1,453戸と2カ月ぶりに増加した。
2022年(令和4年)2月の新設住宅着工戸数
利用関係別 | 戸数 | 対前年同月増減率 |
---|---|---|
総数 | 64,614戸 | 6.3% |
持家 | 19,258戸 | △ 5.6% |
分譲住宅 | 21,453戸 | 23.3% |
貸家 | 23,583戸 | 4.6% |
2. 住友林業、営業増益
ウッドショックによる減益要因はあるものの、国内住宅・建築事業の回復と米国住宅市場の好調がけん引し、増収と営業増益を見込む。退職給付会計の数理計算上の差異を除けば経常利益段階も増益。
長期ビジョンと中期経営計画で森林資源活用を掲げる。森林ファンド設立や木材コンビナート整備をめざすとしたほか、欧州では建築事業に参入。
3.住友林業、米で環境配慮の不動産ファンド 700億円規模
住友林業は米国で不動産開発ファンドの運用に乗り出す。大型賃貸集合住宅を開発し、運用資産は5.8億ドル(約700億円)規模をめざす。米国の環境認証を取得するほか、地域住民の意見を反映するなどESG(環境・社会・企業統治)に配慮した開発計画で差異化を図る。
ファンドは2月に組成し、米子会社であるクレセント社が物件の開発と運用を手がけるほか、住友林業が設立したアセットマネジメント子会社が運用助言を行う。熊谷組や長谷工コーポレーションなど複数の日系企業から、数百億円規模の出資を募った。
フロリダ州タンパやノースカロライナ州シャーロットなど4カ所で、都市近郊に鉄筋コンクリート造や木造の大型集合住宅を開発。計1,000戸を賃貸物件として5年間運営した後に売却する。省エネ性能や廃棄物に関する米国の環境認証を全ての物件で取得するほか、計画策定時に近隣住民との意見交換会を実施し、地域の歴史や文化を開発計画に反映した。
米国では中古物件の不足に加え、25~40歳の「ミレニアル世代」を中心に住宅需要が堅調だ。特に北緯37度線以南の「サンベルト」と呼ばれる地域では、人口や雇用の増加により住宅需要が見込まれている。今回の開発物件もこうした地域で、ESGに関心の高い若いカップルを中心に付加価値を示したい考えだ。
4.積水ハウス純利益25%増 2022年1月期、戸建て販売堅調
積水ハウスが3月10日発表した2022年1月期の連結決算は、純利益が前の期比25%増の1,539億円と最高益を更新した。新型コロナウイルス禍の新たな生活様式に対応した戸建て住宅の販売やリフォームが国内で好調で、1棟あたりの単価も上昇した。増収増益を見込む2023年1月期は木材など資源価格の上昇が懸念材料になる。同日、300億円を上限とする自社株買いも発表した。
2022年1月期の売上高は6%増の2兆5,895億円と過去最高だった。事業別では、主力の国内の戸建て事業が9%増収だった。省エネルギー性能や断熱性などが高くエネルギー収支を実質ゼロにするZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)や、室内換気システムなど付加価値の高い提案が奏功した。同事業の売上高営業利益率は12%で、2ポイント上昇した。賃貸住宅もZEH対応で7%増だった。
建築・土木事業は前の期にあった複数の大型物件の反動などを受けて14%減だった。
コロナ感染拡大の当初は営業活動自粛の影響を受けて苦戦したが、ウェブ会議システムを使う営業手法なども定着し、受注も堅調に積み上がっている。同日、大阪市内で開いた決算会見で堀内容介副会長は「コロナの影響は、戸建てや賃貸など請負型ビジネスに関してネガティブな要因ではなくなった」と話した。
自社株買いも発表した。発行済み株式数(自己株式を除く)の2.22%にあたる1,500万株を買い付ける。取得期間は3月11日から2023年1月末まで。株主還元を強化する。
2023年1月期も業績が拡大する。売上高は前期比8%増の2兆7,870億円と7期連続で過去最高を更新する見通しだ。米国での住宅販売が、過去最低水準の住宅ローン金利の追い風を受けて好調で、国際事業の売上高が7%増える見通しだ。
純利益は前期比3%増の1,580億円と過去最高を更新するが、伸び率は鈍化する。資源価格上昇が国内の戸建てや賃貸事業の営業利益を130億円押し下げる要因になるためだ。足元ではロシアのウクライナ侵攻で木材や鋼材、銅などの資源価格が上昇傾向にある。こうした影響はまだ今期の予想には織り込んでおらず、収益の不透明要因になる。
年間配当は4円増の94円を予定する。増配は11年連続となる。
5.セレンディクス、「3Dプリンター住宅」 愛知で設置
スタートアップのセレンディクス(兵庫県西宮市)は外壁などの部材を建設用3Dプリンターでつくった球体住宅「スフィア」の1棟目を愛知県小牧市に設けた。現地で施工にかかった時間は23時間だった。同様の建物は欧米で実用化が進むが、国内では珍しい。
住宅メーカー、百年住宅(静岡市)の工場に、内装の実験用の建物として設けた。海外の協力工場にある建設用3Dプリンターで部材をつくり、重機を使って組み立てた。
スフィアは一定の条件を満たせば建築確認申請が必要ない床面積10平方メートルのサイズ。販売価格は300万円で、短時間で安価に建てられるのが売りだ。まず企業向けにグランピング用施設などの需要を見込む。8月に消費者向け販売の開始を検討する。
6. 住宅木材、米で10カ月ぶり高値 ウクライナ侵攻で16%急騰
米国で住宅用木材の価格が急騰している。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の先物価格は1週余りで一時16%上昇し、約10カ月ぶりの高値を付けた。ロシアのウクライナ侵攻や欧州などの経済制裁のあおりで、欧州からの木材供給が停滞するとの観測が広まったためだ。「ウッドショック」などで高値が続く米国相場で上昇圧力が強まった。
住宅の壁や床に使う製材品のCME先物価格(期近物)は先週末、一時1千ボードフィート(BF=約2.36立方メートル)あたり1,477ドルまで上昇し、ロシアのウクライナ侵攻直前の2月23日よりも16%高くなり、2021年5月下旬以来の高値を付けた。直近の3月8日は1,386ドルだった。
ロシアやベラルーシ、ウクライナは住宅の構造材に使う針葉樹の産地で、欧州連合(EU)が輸入する針葉樹製材品のうちの4分の3をこの3国が占める。ところが、ロシアのウクライナ侵攻を受け、国際銀行間通信協会(SWIFT)がロシアの主要銀行を排除したほか、EUがベラルーシにEUへの木材輸出停止の制裁をかけた。このため欧州域内で木材が不足するとの見方が広がっている。
欧州での木材不足が、さらに米国の調達難に波及しそうだ。米国は新型コロナウイルスの感染拡大以降、郊外への住み替えが進み木材需要が増加している。ウッドショック以降、国内や近隣のカナダだけでは需要をまかないきれず欧州からも積極的に輸入していたため、今回のウクライナ侵攻で供給不安への懸念が高まった。
CME期近物の相場はウッドショックで2021年5月上旬に1,686ドルという史上最高値を付けた後、いったん下落していた。しかし11月に木材の主産地のカナダを豪雨が襲うと、カナダでの丸太の伐採停止や交通網の混乱による供給不安から、価格が再び上昇していた。今回のウクライナ侵攻が、一段と相場を押し上げた格好だ。
米国では製材品の現物価格も上昇している。米業界紙ランダム・レングスによると、ツーバイフォー(2×4)住宅向け製材品で主流の「No.2&ベター」は3月第1週に1千ボードメジャー(BM=2.36立方メートル)あたり1,400ドル。前週比で35ドル(3%)高く、前年同期比で375ドル(37%)高い。
米国ではこれから木材需要期の夏を迎える。「住宅需要は依然として旺盛とみられ、木材相場はしばらく高止まりしそう」(商社)との見方が強い。米国相場の高騰は日本の木材輸入価格の押し上げ要因となる可能性がある。
7.住宅ローン、金利上昇に備え 固定型や繰り上げ検討
歴史的な低水準が続いてきた住宅ローン金利に変化の兆しが見え始めた。長期金利の上昇を受けて大手銀行は2、3月に固定型の適用金利を相次ぎ引き上げた。資源高や米利上げなどを背景にした円安が継続すれば国内の物価上昇圧力は続き、住宅ローンの金利上昇が変動型にも広がる可能性がある。利用者はどんな点に気を付けたらいいのだろうか。
「金利が上昇したときの対策を夫と考えています」。福岡県に住むパート勤務の30代女性Aさんはこう話す。2021年に住宅ローン約3,000万円を変動金利年0.8%で借り、夫婦で自宅を購入した。7歳を筆頭に子ども3人を抱えるなか月約8万円ずつ返済するが、もし金利が上がれば返済負担は増える。教育費とのバランスをうまく取りたいという。
住宅ローン金利は主に3つのタイプがある。金利が完済まで変わらない全期間固定型、当初の5年、10年など一定期間は金利が変わらず、その後に再び金利タイプを選ぶ固定金利選択型、半年ごとに金利を見直す変動型だ。固定型の適用金利は長期金利などを参考に金融機関が決める。変動金利の多くは日銀の金融政策の影響を受ける短期プライムレートに1%を上乗せして基準金利とし、ここから一定の利率を引き下げて適用金利とする仕組みとなっている。
大手行の適用金利は全期間固定型で2022年3月に年1~1.8%程度に上昇。変動型は日銀が大規模金融緩和政策を維持しているため、年0.4%~0.5%程度で推移している。ただ市場では将来の政策変更を予想する声もある。大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「国内の物価や米国景気などが条件を満たせば、日銀総裁が交代する2023年度以降に金融政策を見直す可能性は5割以上ある」と話す。
住宅金融支援機構が2021年10~11月に全国の住宅ローン利用者を対象に実施した調査で変動型は全体の67%と最多だったが、固定型への関心が高まりつつある。三井住友銀行ローン業務部では「昨年度に1割程度だった全期間固定型の利用者が、足元で2割弱に増えた」と話す。みずほ銀行個人ローン推進部でも2月に固定型の問い合わせや契約が増加したという。
「将来の金利上昇による負担増を避けるなら、固定型の利用が有効だ」と住宅ローンアドバイザーの淡河範明氏は助言する。まずこれから新たに住宅ローンを借りる場合は、全期間固定型が有力な選択肢になるという。
例えば住宅金融支援機構と民間銀行が提携して扱う全期間固定型ローン「フラット35S」の金利は3月時点で1.438%(諸費用を考慮した実質ベース)。前月比で上昇したが、大手行の変動型の最優遇金利との差は0.933%で2004年からの平均金利差を下回る。金利差は将来の金利上昇リスクを避けるためのコストに当たる。「平均金利差を下回るなら、全期間固定型はまだ割安な水準にある」と淡河氏は固定型を薦める。
すでに変動型で住宅ローンを借りている人はどうか。選択肢になるのが固定型への借り換えだ。5年前に4,000万円を期間35年・変動金利0.625%で借り、月10.6万円ずつ返済している例でみてみよう。残債約3,500万円を現時点で全期間固定1.15%に借り換えると、月返済額は11.8万円、残債の総返済額は約4,240万円になる。いずれも現在より増えるが、返済負担は市場金利が今後上昇しても変わらない。
このまま借り換えず、変動金利が借り入れから10年経過後に上昇するとどうか。変動型の基準金利が過去の平均値である3.683%に上昇すると、基準金利からの引き下げ幅は完済まで変わらない仕組みなので適用金利は1.833%になる。月返済額は12.2万円、総返済額は約4,310万円と全期間固定より膨らむ。
もちろん変動金利が過去の平均値まで上昇するとは限らない。金利上昇リスクにある程度備えながら金利動向を見極めたい場合は、固定金利選択型を選ぶ手もある。10年固定で0.85%なら、月返済額は11.3万円ですむ。ただし固定期間終了後に借り換えることにすれば、諸費用が再びかかる。
金利は期間が長いタイプから上昇するのが一般的。変動型の金利が上がるころには固定金利はより高い水準になっている可能性が大きい。固定型に変更したいなら早めにすることが大切だ。
ただ変動型から固定型への借り換えは月返済額が増える。負担増を避けたいなら、残債を予定より前倒しで返す繰り上げ返済が一案になる。「適用金利が上昇した時に一定額を繰り上げ返済すれば元本と利息負担が減り、毎月の返済額を維持できる」と公認会計士で住宅ローンのコンサルティングを手掛ける中村岳広氏は話す。期間内に完済できないリスクを避けられることも大きいという。
では毎月の返済額を変えずに予定の期間で完済するには、いくら繰り上げ返済をすればいいのか。
4,000万円を期間35年・変動金利0.5%で借り、月10.4万円返済する例でみてみよう。
住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFS(東京・千代田)の試算によると、適用金利が返済開始から5年後に1%に上昇すると約240万円が必要になる。10年後に2%に上昇する場合は約480万円だ。同社の塩沢崇取締役は「金利上昇リスクに備えて毎月一定額を貯蓄し、繰り上げ返済の用意をすることも選択肢になる」と助言する。
8.公示地価2年ぶり上昇 都心商業地は下落、コロナ爪痕も
国土交通省が3月22日発表した2022年1月1日時点の公示地価は全国平均が前年比0.6%上がり、2年ぶりに上昇した。新型コロナウイルス禍から経済が徐々に持ち直していることを映し出した。在宅勤務の広がりなどによる堅調な住宅需要がプラス要因となった。コロナの爪痕が残る都心の商業地や地方の観光地は下落も目立ち、本格回復はまだ見通せない。
公示地価は土地取引の価格指標となる。2022年は調査対象の全国約2万6,000地点の44%が上昇し、前年(19%)の2倍超に広がった。
住宅地は0.5%上がった。前年の0.4%下落からプラスに戻した。テレワークが広がり、都心だけでなく郊外の住宅需要が伸びた。東京圏では柏市(0.4%)が14年ぶりにプラスとなった。さいたま市(1.5%)や横浜市(0.8%)も上向いた。
商業地は0.4%の上昇だった。前年の0.8%下落からの戻りは鈍い。大阪府が0.2%の下落で2年連続のマイナスとなるなど、地域差も目立つ。2021年は厳しい入国制限が続いて訪日客数は過去最少に落ち込んだ。外国人需要への依存度が高かったエリアは逆風が続く。
コロナ禍で通勤者が減ったオフィス街も低迷している。東京23区のうち千代田・中央・港の都心3区は2年連続でマイナス圏に沈んだ。再開発が進んで2.3%上がった中野区をはじめ他の20区はプラスだった。
工業地は2.0%上昇した。巣ごもり需要によるインターネット通販拡大が追い風となっている。東京に近く、物流施設の適地と考えられる千葉県の市川市や船橋市の一部は20%程度の高い伸びとなった。
地域経済の中心である札幌・仙台・広島・福岡の4市は全用途平均で5.8%上がった。伸び幅は前年の2.9%から拡大した。主要駅周辺の再開発事業などで周辺エリアからの人口流入が続き、消費の増大が次の投資を呼び込む好循環が生まれている。
投資マネーの流入も地価を下支えした。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると2021年の国内不動産に対する投資額は4兆4,891億円だった。
同社の大東雄人氏は「米国などではオフィス賃料の底打ちが見えてきた。海外投資家は日本市場の回復を見越して投資に積極的だ」と話す。米国で利上げが進めば、低利で資金調達できる日本は投資先として相対的に魅力が増す構図がある。
地価動向に詳しい三井住友トラスト基礎研究所の坂本雅昭氏は「当面は住宅地で緩やかな上昇が続く一方、都心のオフィスは緩やかな下落が見込まれる。商業地全体がコロナ前の水準に回復するのは観光地などに訪日客が戻る2023年以降ではないか」と予想する。